密談
<王都から程近いある館での会話>
─ 第一王子の具合はどうなのだ。名医の薬で良くはならぬのか。
と小太りな紳士がやや神経質そうに尋ねた。
─ それが、なかなか。難しい様子でございます。一度熱が下がったと聞いたのですが、その後咳が酷くなりまして、症状はむしろ悪くなりましたようで。
─ 難儀じゃな。ようやく遠国から姫をもらって、もうすぐ子が生まれるというのに。それで母親の方は大丈夫なのだろうな。
─ はい、万全でございます。妊婦は城外の館へ移りまして、身の回りを世話する者達も城と行き来はございません。
─ ふむ。質の悪い風邪が流行っておる。念には念を入れることだ。
─ 王家にはこの二十年、王女ばかりだ。今度は、王子だと良いがな。
─ はい。誠に。
─ ところで、王様でございますが。また一人、女が子を孕んだようでございます。
─ ほほう。それは。お盛んなことだ。で、今度は誰だ。
─ 小間使いでございます。地方貴族の娘だとか。
─ 若いのか?
─ それはもう。十八になったばかりの……。
─ おお、たまらんな。儂もあやかりたいものだ。いや、勿論、国王陛下は男子を得るために励んでおられるのだ。そこが、儂などとは心掛けが違う。偏に国家の為なのだから、有り難いことだ。
─ 仰せの通りで。
─ しかし、なんだの。一昨年、落馬事故で第二王子が亡くなられて、急に王家の繁栄が危なくなったな。こんなことならあの時、罪人を許すべきであったかも知れぬ。王族を減らしたことが裏目に出た訳だ。
─ 実は、その件でございますが。
背の高い男は、他に誰も居ない広々とした一室をぐるりと見渡してから、声を落として囁くように言った。
─ フェドラーノ公には小さい娘が居たはずだと申す者がおります。そのまま生存しておりましたら歳は、今年二十一だとか。
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- qw_js4dnif7
- 制作者:
- アミンタ
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- 作品集 > テキスト
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